かわるものと、かわらないもの ひらまつかずひこ    

 
薫風舎でひらかれる小林功さんの三回目のコンサート。ショパンとドビュッシーだけというとてもシンプルなプログラムです。前半のショパンは小林さんのこれまでの演奏活動でも一つの核となってきたし、これからもやはり大切な世界として、この作曲家の作品を彼は奏き続けていきたいと考えています。またその一方で、毎年、新しい未知の作品を手がけながら、コンサートのプログラムを組んできました。昨年はお得意のバッハやショパンのほかに、20世紀の作曲家ストラビンスキーの「ペトルーシュカ」で新天地を拓きました。今年は気持ちも新たに、ドビュッシー。  
 プログラミングを工夫するということだけであれば、どの演奏家だってやっている当たり前のことです。ただ今回のように、こんなにすっきりした形で実現することはあまりないでしょう。これは、毎年同じ時期にこの場所で静かに流れる午後のひとときを念頭において考えられたプログラムです。もちろん古今のいろいろな作曲家をならべて聴き比べるのもたのしいことですし、変化があっておもしろいのですが、じっくりと同じ作曲家の曲をまとめて堪能するというのはまた格別の経験だろうと思います。言ってみれば、いつもとかわらない世界とあらたな世界の組み合せ。小林さんご自身による簡にして要を得たトークを交えて、じっくりとおたのしみください。    
 去年のショパンとまたちがった新しいショパンがきけるかもしれません。またはじめて聴く小林さんのドビュッシーには音符の向こうに、ひょっとするといつものうたいまわしが聞こえてくるかもしれません。かわるものと、かわらないもの。おたがいが交錯しあってどんな世界がくりひろげられることでしょうか。いつもとひと味ちがったくつろぎの時間と、ここちよい刺激がみなさまを包み込みますように。